ブログ14. 現場の力- 中東出張シリーズ

中東へ、女、機械を売りに行く
多くの人に助けられて、中東へ。
お客様に助けられて、 過去最高益へ。
戦争中の国に物資を運ぶ商社の紹介記事をみて決めた、商社への就職。​
親子で中東をみつめる事になった不思議。
いろいろ綴ります。

出発前は、在庫数聞くぞ! と力んでいたのに、
話の流れから自然と在庫を確認することになった。
背の高い彼、レバノン人がおもむろに台帳を取り出した。
大柄な彼にお似合いのとても大きい立派な表紙のノート。
彼は、机の上において、大っぴらに開け、”目指す”モデルが記載されているページをまさぐり始めた。

そこに書かれていたのは、入庫数、売れた台数、在庫数だった。
分かりやすい管理。
手書きで、大きな文字で、書かれていた。
アラビア語の部分は、客先名か支払期日のようだった。
販売日付をみると、最後に売れたのが2か月以上前だった。
いくらなんでも売れてないと分かる。
パラパラとめくっては、他のモデルも見て、在庫数を読み上げてくれる。

一番在庫の多い品番は、クレームを起こした2モデルだった。
「xx台!」とレべノン人が述べ、オーナーの孫が聞いてきた。

「返品は来なくなったんだ、安いから。だけど、日本製をずっと買ってきた客には不評だよ。
 これ日本製か?

事情を知っている私には 辛い質問だった。しかし、メーカーのエンジニア2名と私の上司が 
かつて原因を確かめに来ただろう、、アブダビに。
聞いてないの? 知ってるけど確かめるの?  もう自問自答の世界だ。
それでも、”日本製だ” と すぐに答えた。

果たして、私は 嘘つきと思われたのか、いい奴だと思われたのか、
何も知らないと思われたのか。。。 
知る由もないが、どう答える奴だ という事だけは伝わっただろう。


”日本製だ”と答えて反応を待ったが、何もなかった。
つと、レバノン人が せわしなく帳簿をめくりながら、聞いてきた。
「一体、どのモデルが売れるんだ?」

いや、それは、私が聞きたい事でしょ。と思いながら、一応説明する。
このモデル。これも。これからはこれ。
こちらからは、販売履歴のリストを見せて、モデルにマークをしていく。
モデルの横に書いたスペックをペンで指しながら、
雨水はどんどん深く掘らないと出てこなくなっていると聞いている。
だから、これからは、それに対応するモデルが必要だと考えている。
だから、このスペックを持つモデルは 今後売れると思う。

この辺りまでの事は、今までの上司のレポートや話から蓄えた知識で説明ができる。
まあ、実際に現場を見たわけでないので、自信のなさが、言葉に出てしまう。 
”考えている” 

一階にいる仲間たちにも 当然聞いているはずの内容だから、彼らと私の話が
一致するのか 確かめたかったのだろう。
そして、何故、そうなのかを 私から聞きたかったのだと思う。

オーナーの孫は任されたばかり。
レバノン人もつい最近雇われたばかりだった。
業界を知っていても、自社の販売商品を覚えていくには時間も必要だ。
悲しいことに、業界も、仕様も、価格も、競合も 全てを知っている番頭が
突然いなくなったことが こちらの会社の辛いところだった。
新しい番頭は、2番手で支えていた人なので、彼が幾分か知っていたが、
彼らは、販売はするが、製品の構造や理屈を知って、売れる背景を知る人はなかった。
分かる必要もなかった過去の流れもある。 
日本製だから品質は問題ない。
彼らが鍛えていたのは、高いと言われることへの交渉力。
競合の名前を出されることへの対応力。
同業他社の情報引き出し力。
この当時は、修理も殆ど行っていなかった。使い捨てしていた。という事実もあった。
これはかなり後で知ったことだけど。

在庫数をモデルごとに聞いて、持参したリストに書いていくと、
オーナーの孫が、あとでまとめて知らせるよ と言う。
びっくりした。在庫リストなんて、見た事がなかったからだ。
本当に出てくるのか不安になったが、仕方ない。

台帳を流し見している中で、売れ筋モデルの在庫が無い事に
気づいていたので、
「在庫リスト待ってるよ。
在庫ゼロのモデルも忘れずにリストに載せてね。
だって、このモデル、在庫ゼロ、売れ筋だよ。
過去の購入台数をみても沢山買ってるよね」

机の向こうで、二人が首を伸ばして、え~ というそぶりをした。
レバノン人が、またまた 台帳を激しくめくり、そのモデルの販売履歴を見ている。
オーナーの孫は、1階にいる新しい番頭を呼びだし、
この台帳には今まで購入したモデル全てが書かれているのかと聞き、
在庫が不足している物はあるのか? と聞いた。
番頭は、スペックをすらすら答え始めた。


”2インチ 何々、2インチ これこれ” 
 (何々やこれこれには、モデル名の一部が入る)
新しい番頭が 在庫の無い商品の スペックを並べ始めた。
オーナー孫やレバノン人は、慌てふためいた。
私は、とっさに リストのモデル名に印を入れた。
在庫切れのモデルは少なかった。

が、在庫が切れそうなモデルは多かった。
なんだか、一人安心してしまった。だって、受注間違いなし。

受注を待つとなったモデルのカタログを出し、
見方を説明した後、発せられた2インチ と モデル名を示した。
すると 合点がいったようで、オーナーの孫は、商品説明を読みだした。

彼は、どうやら 商品の特徴と、仕様と、売れる理由を理解したようで、
”つまり こういう事なのか?” と確認をしてきた。

当時は何も感じなかったが、
最初の面談の、私含む新メンバーで 基本的な相互理解ができたことになる。
充分に、お役を果たしたと当時の自分に言ってあげたい。

番頭が、サイズとモデルの一部をあげたのは、市場のお客が買いに来た際、このように言うためだ。
番頭以下ワーカーと呼ばれるインド人の方たちには、これが当たり前だ。
ましてやオーナーには、その言い方で通じてきた。
なんで孫になれば通じないのだ、勉強しろ というのが彼らの本音だろう。
マネジャー側とワーカーの間で、すれ違いの会話をして来ていた。

日本から来るということで、頭のいたい大量在庫モデルの件を追求したかっただろうに、
売れ筋モデルの話になり、流れは一気にこちらのペースに入ってしまった。

空気が変わり、短い休憩に入った。
好奇心でいっぱいの私は、また1階におりて、商品を見回った。
ワーカーたちは 今度は全く動こうとしない。気にしている様子は感じる。
わざと、曰くつきモデルの前に行き、触ってみた。
予想通り。
「それは すぐに返品がある。クレーム多い。安いけど、クレームだ。
(日本製品質を売りにしてきた)我が社にとっては大変な事だ」
「修理するのか?」 わざと聞いてみる。

「いや、しない。オーナーがお客様に申し訳ないと言って、
ただで代替品を渡すと決めたんだ。
お客を納得させるために」
「安いから 最初は すごい勢いで売れたんだ。そしたら、返品、返品になった。
 同じ台数をオーナーは無償で販売したんだ」 
(無償という時は とても声を大きくしていた)

「返品のときに お客は何て言ってたの?」
すると 少し怒り出し、
「何とかならんのか ➡ What can you do for this?」

何とかならんのか、は、代理店が私に言った言葉だが、
ユーザーが代理店に言った言葉でもあり、結局は同じことだ。
質問の仕方が悪かった。
なんて言った?ではなく、
”何故返品になったと思う?”と聞くべきだった。
それに失礼な質問だった。
当時の私は、この客先の技術的な意見を聞きたかった。

返品の理由も、要因も、きちんと把握?明示?されていなかった。
ただ返品される とばかり言われた。
使いだしてすぐに壊れた というのもあった。

簡易スペックにしたのが要因だろうと想定できたのは、
クレーム対応で出張にきたメーカーの2名と上司だけだった。
上司の性格から、予め 私にこの話をすることはない。

改良の約束は言えない。(返品理由わからんし)
値引きなら できるが、今は言えない
原因追及作業なら。。。  かけだしの私は、ここしかできなかった。

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