空港を出て5分ほどで、大きな道にはいり、タクシーのスピードは、80キロに近づいた。
タクシーメーターは 横になっていた。
日差しが強くなりはじめ、12月だというのに日焼けの心配がよぎった。
座席の真ん中に移動すると、ドライバーが神経質そうにバックミラーでこちらを見た。
後部座席のど真ん中は座り心地は良くないけれど、フロントガラスの先の景色がよく見える。砂漠に通るアスファルトの、この一本道だけが光っている。 横切る道も見えない。
ちらつく光と舞い砂のせいで、目をこらしても道の先端は確認できなかった。
左右の窓からは、1m50cmほどの樹木、50cm足らずの雑草、そして鉄塔とケーブルしか見えず、これらは砂ぼこりをつけたまま、砂漠のデコレーションになっていた。
小さな砂埃がいくつも舞いあがり渦になり、砂地に戻っている。 それしかない。
そう、砂漠の地にいるのだから。
あまりにも おおらかな砂漠に迎えられ、緊張は知らぬ間にすっかり溶けてしまい、しばらくゆっくりするしかないと気づき、何をするか考えてみた。
風を楽しむ、砂漠を楽しむ、写真を撮る、そしてドライバーと話す。最後の選択肢は もう少しあとにすることにした。
今、ドバイからアブダビに行くには、空港を出てすぐに幹線直進とはいかない。
高いビル群を両脇に見ながら交通渋滞にため息をつくドライバーに 混雑時間帯を聞いたりしながら、30分以上。渋滞であれば、40分以上かかって抜ける。
最後に聞いた渋滞時間は、朝の7時から11時だったな。